エスニック映画を集めてみた ③ ~イヌイットの誇りが生んだ『氷海の伝説』~

イヌイットの人々が自身のアイデンティティーに立ち返った叙事詩的映像絵巻 『氷海の伝説』(原題:Atanarjuat: The Fast Runner)公開年:2001年製作国:カナダ監督:ザカリアス・クヌク出演:ナタール・ウンガラーック第54回カンヌ国際映画祭カメラ・ドー…

エスニック映画を集めてみた ② ~ロシアの大地で甦った黒澤明と『デルス・ウザーラ』~

黒澤映画の中で異彩を放つ、民族の違いを超えた友情のドキュメント 『デルス・ウザーラ』(ロシア語:Дерсу Узала、英語:Dersu Uzala) 公開年:1975年 製作国:ソ連、日本 監督:黒澤明 出演:ユーリー・ソローミン、マクシム・ムンズク 第48回アカデミー…

エスニック映画を集めてみた ① ~『ピアノ・レッスン』を彩るマオリ文化と英文学~

ここでは、人類学者が学術的な目的で撮影した記録映画やドキュメンタリー作品、例えばロバート・フラハティーの『極北のナヌーク(Nanook of the North)』(1922年)や『アラン(Man of Aran)』(1934年)などではなく、いわゆるエンターテインメントとし…

人間、このタマネギ的なるもの ~「文化相対主義」をめぐる一考察~

タマネギの断面 from Wikimedia Commons 社会科学系の学問をする意義 人間というのは、さしずめタマネギのような生き物だと思っている。これは、あるときから自分の中で着想したイメージに過ぎないのだが、もしかしたら以前に本で読んだのか、あるいか何かの…

親和性は抜群、文学と人類学のマリアージュ ~『悲しき熱帯』『菊と刀』から『ゲド戦記』『守り人』まで~

米国を代表する文化人類学者、ルース・ベネディクト(1937年)from Wikimedia Commons。一時期は、教え子のマーガレット・ミードと同性愛の恋仲でもあった。 詩人にして人類学者:三人の「知の巨人」が残した文学的遺産 エドワード・サピア(Edward Sapir, 1…

偉大なる変人、カレン先生のこと ~東洋マニアすぎる英国人教授~

清朝の滅亡まで宮殿として使われた紫禁城(中国・北京) 入学早々、叶わなかった夢 「人類学を学んだら」と謳っておきながら、のっけから脱線しよう。大学でジョイント・ディグリーとして選んだのは社会人類学と歴史学だったが、ここでは歴史の授業で出逢い…

日本人が外国で暮らすということ ~人類学を地で行く留学体験~

機内の窓から見た飛行機の翼 はじめに:なぜ書くか 1990年代は、日本で空前の留学ブームに火が付いた時期でした。バブル崩壊後、自信喪失していた日本人の目が、まだ健全に外の世界へ開かれていた時代。当時の若い世代は、「なんとなくカッコいいな~」とい…